偉人たちはどのように死んだのか – 『人間臨終図鑑』

今回は、山田風太郎の著書『人間臨終図鑑』を紹介します。

山田風太郎は、伝奇小説や忍法帖シリーズといった娯楽作品で著名な作家ですが、『人間臨終図鑑』という、古今東西、数多の偉人の死を書き記した大著もまた代表作のひとつです。

10代における死に始まり、果ては100代まで。総勢923人もの偉人の臨終を書き記したこの本は、それぞれの偉人の「死に様」が見事に描かれているのがその魅力ですが、はて、どうして著者は、そして読者である自分は他人の「死に様」にこうも惹かれるのだろうか、という疑問も呈しています。
もちろん、10代や20代で亡くなった偉人の「臨終」は寿命や病気でないことも多く、ドラマティックなおもしろさがあります。
ですが、他人の「死に様」に惹かれる理由はそれだけではないようにも思えます。

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「他人の死」だけが、
「自分の生」を照らしてくれる

この本は図鑑の体裁を取っているため、冒頭から順に読む必要はありません。
たとえば、手始めに自分のいまの年齢で「臨終」を迎えた人の項を読んで見るのも良いでしょう。
40歳なら「石田三成」「ジョン・レノン」、
56歳なら「リンカーン」「ニーチェ」「ヒトラー」、
65歳なら「バッハ」「原敬」「ディズニー」などなど……。
あの偉人は自分と同年の頃、このように死んだのか——ということを知ることは、現在の「自分の生」を照らしてくれるような感覚があります。
また、「いついかなる時代、どんな場所でも、どんな偉業を成した人でも、人は死ぬ」という当たり前のことを、圧倒的量(総勢923人!)で提示されると、少し死への畏れがやわらぐような、どことなく落ち着いた気持ちになれる気もします。

前回の記事(「自分の死」という考え方の誕生)で、「自分の死」という言葉が意味する、死でさえも社会性から逃れられないという窮屈な側面について少し述べましたが、本書には「そうはいっても、どうしようもないこともある」と笑ってしまえるような、圧倒されるような多くの「臨終」が描かれています。

この世で知ることのできる「死」は「他人の死」だけです。つまり、「他人の死」を知ることは、「自分の生」を感じること。
「自分の死」についてばかり考えるのは疲れることです。
時には、「他人の死」から安らぎと力をもらうのも悪くないのではないでしょうか。