異文化から学ぶ「終活」⑥ – 1

ここでは、過去5回にわたり「異文化から学ぶ」シリーズを掲載してきました。
無宗教化の進むこの国においては——「終活」に取り組むにあたって「死」をどう捉えるべきか——、そんな戸惑いを覚える方も少なくないのではないかと思い、「異文化における死」を知ることが、なんらかのヒントとなればと考えたからです。

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「チベットの死者の書」

さて、今回から4回にわたり「チベットの死者の書」をご紹介しようと考えています。

ですが、「チベットの死者の書」には、これまでの記事で扱ってきたものと決定的に違う特徴があります。
それは、そこでは「ヒント」ではなく「答え」が述べられているという点です。
ただ、あくまでもその「答え」はチベット仏教という複雑で大きな体系を成す教えの中においての「答え」であり、チベット仏教の修行僧であっても容易にはたどり着けない類のものです。

ですので、今回は、その概要を示すとともに、いま日本に暮らし「終活」について考えているひとびとがアプローチしやすい「チベットの死者の書」の特徴や性質をご紹介し、そこから各々の興味や関心を広げていってもらえるような内容を心がけたいと思います。

Bardo バルドゥ

「ブッカー賞」という文学賞をご存知でしょうか?
読書家の方ならご存知かもしれませんが、これは世界的に権威のあるもののひとつと言われるイギリスの文学賞です。
今年の受賞作はジョージ・サンダース『Lincoln in the Bardo』(ジョージ・サンダースはアメリカのベストセラー作家ですが、この著作はまだ原書での刊行間も無く、邦訳が待たれます)。
息子を幼くして亡くしたリンカーンが、毎夜墓地に通い、その亡骸を抱きしめ泣いたという史実に基づいたこの物語ですが、タイトルにある「Bardo」とはチベット語であり、邦訳すると「中陰・中有」、もっと一般的な言葉にすると「四十九日」がそれにあたります。日本の葬儀とそれ以降の供養は仏式が多いため、「四十九日」と訳すことでずいぶん親しみが感じられるかと思います。

欧米への影響力

さて、「Bardo」というチベットの、しかも宗教的言葉が、アメリカのベストセラー作家の作品タイトルに用いられ、かつイギリスで大きな文学賞を得ている。このことから、欧米文化においても、チベット仏教は強い影響力を持っていることがうかがえます。

そのあたりをふまえ、「チベットの死者の書」(バルドゥ・トェ・ドル)の概要を次の記事でご紹介していきます。

異文化から学ぶ「終活」⑥ – 2▶︎