「抽象化」を楽しむ

昨今、人工知能(AI)に関するニュースを目にすることが増えました。
トップ棋士を次々と破った「AlphaGo(アルファ碁)」のニュースなどは記憶にあたらしいのではないでしょうか。

もしかすれば、いずれ人工知能が「終活」に深く関わる日もやってくるのかもしれません。
ですが、それはきっとまだ先の話。

さて、唐突ですが、今回は「抽象化」という言葉から「終活」を考えてみたいと思います。

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「抽象化」とはなにか

冒頭でAIについて触れたのは、筆者が「抽象化」という言葉に関心を抱いたきっかけがそこにあったからです。

不完全情報ゲーム

今年(2017年)の1月、アメリカのカーネギー・メロン大学が開発したAIがプロのポーカープレーヤー達に完勝したというニュースがありました。
これは、チェス、将棋、囲碁などでAIが人に勝ることとは意味合いが異なります。
というのも、プレイしたことがある方なら察しが付いているかもしれませんが、ポーカーというゲームはすべての情報が公開されているわけではありません。
チェス、将棋、囲碁は、いわば「計算の対象」はすべて盤上に明らかにされています。ですが、ポーカーは手札を隠し、駆け引きを楽しむゲームでもあるのです。
こうしたゲームを「不完全情報ゲーム」と呼び、AIが人に勝ることは難しいと考えられてきたそうです。

「抽象化」の字義

前置きが長くなりましたが、この偉業を果たしたAIに関する論文が最近公開され、筆者はそこに「抽象化」という言葉を発見しました。
どうやら、ある種のポーカーゲームでは「全宇宙の物質の数よりも多い」パターンが生じてしまうため、それはさすがに計算できない。なので、そこで「抽象化」を行ったと論文にはありました。

抽象化(ちゅうしょうか、英: Abstraction、独: Abstraktion)とは、思考における手法のひとつで、対象から注目すべき要素を重点的に抜き出して他は無視する方法である。

調べてみると、「抽象化」の字義は上記のようなものでした。
この時、筆者はふと思いました。

故人を思い出す時、それは自身にとって重要な記憶や思い出ばかりで、これもまた「抽象化」なのかもしれない。

「抽象化」される故人

考えてみれば、遺族や友人に語られる故人は、すべてそれぞれによって「抽象化」された故人といえます。
そしてそれぞれの「抽象化」の違いを知り、楽しみ、故人を偲ぶ。

こう考えた時、その思い出がどんな内容であれ、「抽象化」され語られる故人というのは幸せな人生を送った人に思えます。

人生の要素の数

専門的なことはわかりませんが、人の人生をつぶさに観察すれば、その中で起きた全てのことは「全宇宙の物質の数よりも多い」と言われてもそうかもしれないという気がします。

そして、そんな人生の晩年に取り組む「終活」は、いわば自分自身の「抽象化」ではないでしょうか。
とてもすべては語りきれない。だからこそ、自分にとって大切だったものを選び、抜き出す。
こぼれ落ちるものがほとんどですが、そうしたものの中には遺族や友人たちが拾ってくれているものもあるでしょう。

葬儀、埋葬、墓。遺言、弔辞……。
人の死に際し、それは儀式であるためさまざまなものが表面化します。中にはたどたどしく、不器用なものもあるかもしれません。
ですが、そのどれもがそれぞれの「抽象化」を経たものだと思えば、表面的にはどうであれ、やはりそれは素敵な式典だと言えるのではないかと筆者は思います。

終わりに

「終活」というと、どれもが「具体的にどうするか」という選択を迫られているように感じるかもしれません。
ただ、当然そこには選択するという過程があり、意識しなければ見えないような、抽象画のような人の想いも描かれているはずです。

今回の記事は筆者の想いを色濃く反映してしまいましたが、これが少しでもみなさまの「終活」にやさしいグラデーションをもたらせれば幸いです。