死者のプライバシー

終活マガジンではこれまで、いくつかの記事で、テクノロジーの進化が「死のカタチ」にどのような影響を及ぼすのかを考えてきました。

たとえば、最近ではこちらの記事(異文化から学ぶ「終活」⑨)
エストニアが、DNAの提供者を募り、社会福祉としての科学的病気予防に取り組みはじめたとのニュースです。

また、「死者の目線の疑似体験?」という記事では、「死者の目線から葬儀体験ができるVR(ヴァーチャル・リアリティ)動画」の登場を扱いました。

いま挙げたふたつはどちらも前向きな取り組みです。ただ、倫理的な観点や宗教観などをふまえれば、首をかしげるひともいると思います。

今回ご紹介するニュースは、残念ながらテクノロジーの進化が「死のカタチ」に悪影響を及ぼしたというほかないものです。
しかし、「スマホ」という身近な道具がまつわることから、とおい話とも言えないため、一考が必要かとご紹介することにいたしました。

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指紋認証

昨今のスマホでは珍しく無いセキュリティ機能に「指紋認証」があります。
古くから「指紋」には、他人と一致しないという特性があることはよく知られており、それを操作の解除方法として利用したものです。
また、類似の機能の進化したものとして、「虹彩認証」や「顔認証」も様々な場所や機器で実用されつつあります。

今月、フロリダ州の警官たちが葬儀場に立ち入り、亡くなった男性の手を使い、彼のスマートフォンを解除しようと試みたとの報道がありました。

その場に居合わせた亡くなった男性の親族はひどく困惑したといいますが、どうやらこの時の警官たちの行動は、法的に問題とならないようなのです。

死者のプライバシー

亡くなった男性は、ある犯罪との関係があったとのことですが、警官たちは令状を持たずに葬儀場を訪れました。
警察が令状を持たずにスマホを調べるのは憲法違反であり、容疑者にはこれを拒否する権利が認められています。
しかし、複数の法の専門家が認めた意見として、死後はプライバシーの尊重がないとされるため、DNAや筆跡の調査と同様のかたちで指紋を採取しにやってきたというのが警察の理屈でした。

権力とプライバシー

これまで、事件のあったアメリカでは、FBIや司法省と、最新鋭のテクノロジーを開発する会社との間で、スマホなどの端末に関するセキュリティを議題に幾度と問答があったそうです。

操作の重要な手がかりと成り得るスマホを挟み、プライバシーと権力と法が絡み合ってしまっているのです。

終わりに

しかし、死者の親族からすれば、どのような理由であれ、とつぜん葬儀場に他人が現れ、死者の手を勝手に触ることは、このうえなく乱暴なことだと感じるでしょう。
また、今回のケースと同様の理屈で、「虹彩認証」や「顔認証」を求められることもあり得るのだと思うと、明確な法整備が求められます。