国民的絵本作家

今月の2日(2018年5月2日)に、絵本作家の加古里子(かこさとし)さんが亡くなりました。

1960年代より絵本を発表しはじめ、92歳で亡くなる寸前まで旺盛な活動をされていたため、多くの世代に馴染みのある、まさしく国民的な絵本作家と呼べる方でしょう。

kakosatoshi

工学博士としての側面

加古里子さんのデビュー作は1959年発表の『だむのおじさんたち』。ダムが人々の生活にどのように役立っているかを描いた作品です。
出自が東京大学工学部であることや、絵本作家となる以前に工学博士となっていることから、加古里子さんらしいデビュー作と言えるでしょう。

その後も、科学絵本と呼ばれるジャンルの作品を多数発表します。

特に、「福音館の科学シリーズ」から刊行されている『かわ』『海』『地球』『宇宙』『人間』!

筆者は幼少の頃、このシリーズの『海』の虜となり、ぼろぼろになるまで読み返し、「海」という存在の壮大さに打ちのめされました。

大人の読み物として

もちろん、科学絵本といえど、子供向けのものです。実際、子供だった筆者は夢中となりました。シリーズのどれもがとても美しい本です。
ですが、専門書を丸ごと詰め込んだような充実の内容を、優しい絵とともに少ないページにまとめる仕事は、大人にとってもたいへん素晴らしい読み物です。

わかりやすさを維持したまま、内容の不十分も避け、工学博士としての論理力でもって壮大な世界(『かわ』『海』『地球』『宇宙』『人間』)を描いたそれらの絵本は、静謐さを感じさせます。

晩年とは

ここ最近の記事は、死の間際まで旺盛な活躍をされた方に関するものが続きました。

シリーズ – かぐや姫にまつわる死生観」では、映画『かぐや姫の物語』が遺作となった高畑勲監督、地井武男さんについて。

そして「生涯をかけた「終活」」では、死後に820万ドル(約9億円)もの大金を奨学金にあてて欲しいと寄付した女性をご紹介しました。

冒頭でも述べた通り、加古里子さんもまた、そうした方のひとりでした。

「終活」という言葉から述べるとすれば、上記の方々の「終活」、それは「終わりのための活動」ではなく「終わらない生活」だったのかもしれません。

自身の死後もまた、別の命の生活が続く。
そうした想像力と、自身の生活の充実を強く想った結果が、旺盛な晩年を生み出したのでしょう。