亡き祖母からの手紙

終活はこれから旅立つ方の視点が多いですが、見送る側の気持ちも理解しておく必要もあります。
このカテゴリでは見送る側の気持ちを、様々な故人とのエピソードから覗いてみます。

今回はその第8回目。海外在住M.Aさんのエピソードです。

 

 

私は、昨年の11月に母方の祖母を亡くしました。

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彼女は、84歳でこの世を旅立ったのですがその理由は膀胱癌を患ったからです。
私は3人兄弟の末っ子として育ったのですが、幼少時から子供心に近所に住んでいた父方の祖父母は5歳年上の姉を大事にしていて私はそれほど愛されていない。と感じていました。
けれど、同じ県内に住んでいた母方の祖母は全身全霊で私に愛情を注いでくれていたことが子供心にしっかりと感じていたのです。
今思えば、私に愛情という事を教えてくれたのは祖母だったのかもしれません。

 

そんな私は、24歳の時に憧れだった海外生活を送るためのスタートとして英語を身につける為に語学留学で、とある国に訪れました。
その時に出会った、現地の男性と恋におち2年の遠距離を乗り越えて2年半前に結婚しました。
つまり、国際結婚。
現在は、主人の国に在住しています。
私が主人の国に向かう日に、祖母が車いすに乗って空港まで見送りに来てくれました。
私の祖母という人物は、常に笑顔で優しい人なのですが周囲に気を使いすぎて自分の意見やお願いが出来ない人でした。
そんな彼女が、私の兄に涙を流して電話越しで「空港まで、見送りに行きたい。もしかしたら、これが最後になるかもしれない。だから、お願い。迷惑をかけるのは十分承知してるけど空港まで私を連れて行ってほしい」と言ったそうです。

そして、空港まで来てくれて笑顔で私は旅立ち主人の国で結婚生活を送って8カ月ほど経過した時に姉夫婦に第一子が誕生し、主人も仕事が忙しい時期に入ったこともあり2カ月だけ一時帰国しました。
家族や周りは私の一時帰国を知っていたので、久々の再会を果たしても「あぁ~おかえり」という様な普通の対応だったのですが母方の祖父母には私の帰国を秘密にしていて驚かせることにしていたので、姉夫婦と祖父母宅へ赴いたときに、祖母は悲鳴を挙げていました。

そして、大粒の涙を流し「おかえり。おかえり。会いたかったよ」と抱きしめてくれたのです。
その後、私が主人の元に戻る数日前にも祖母宅を訪れ昼食を共にし帰る際に彼女は笑顔で「また、待ってるからね。大丈夫。元気でいるよ」と言って別れました。
それが、最期の別れになるなんてこの時は想像もしていませんでした。

 

それから月日は流れ、気付けば私が妊娠していることが発覚したのです。
妊娠超初期だったので、安定期に入るまでは日本の親戚などには伝えない方がいいよね?という事を主人と決めていたのですが、妊娠を報告した両親から「実は、黙っていたんだけど祖母が膀胱癌を患っててね。本人は、もう痛い放射線治療とかを受けるのは嫌だ。っていう事で治療はしないことになったの」と衝撃の報告を受けました。
なんのためらいもなく、祖母にスカイプで連絡をして私の妊娠を報告しました。
勿論、がんの事は知らないことにして通常の笑顔で知らせると想像していた以上に喜んでくれたのです。
そして、それから数カ月して祖母は天国へ旅立ちました。
姉に聞くと、とても綺麗な最期だったし医者も驚くほど長くもったそうだよ。
私は、勿論大好きだった祖母の葬儀には参列しませんでした。
なぜかというと、妊娠7か月ほどになっていたのでもし飛行機で無理をし帰国してお腹の子が流産という事になどなったりしたらそれこそ祖母を悲しませることになると心に決めたのです。
けれど、勿論涙は絶えることなく流れひたすら主人の胸の中で泣いていました。
泣いているだけでは、祖母に顔向けできないとは頭で理解していても何かせずにはいられなかったので大きなお腹を抱えて部屋の掃除を気分を晴らすためにしていると引き出しの中から見慣れない封筒を見つけました。
なんだこれ?と、思い中を見てみるとそれは亡くなった祖母からの手紙だったのです。

私が、主人の国に旅立つ際に空港で彼女が私に手渡してくれた手紙でした。

 

今の今まで、こんな手紙があったことすらすっかり忘れていたのに祖母が亡くなってから見つけるなんて、何かの運命か!?と、思い手紙を読んでみました。
そこには、私との思い出などが書かれていたのですが、その中でこんな文章がありました。

 

「社会人経験を長く経験しているあなたに、今更なことかもしれないけれどお祖母ちゃんからアドバイスを送ります。国際結婚は、私が想像するよりもはるかに大変なことが多いでしょう。だけど、それでも常に笑顔を絶やさず周りに感謝する気持ちを忘れないでください。あなたが笑顔を絶やさなければ、絶対に誰もがあなたを愛してくれます。笑顔が保つことは大変な事でしょう。それでも、あなたなら出来るってお祖母ちゃんは知ってるよ」

 

その手紙を読んで、私は今までの結婚生活を振り返りどれだけ自分勝手で主人に八つ当たりをしてきたのかを痛感しました。
笑顔なんていつ見せたっけ?感謝の気持ちっていつが最後だっけ?
亡くなった祖母からの手紙が、私の目を覚ましてくれました。

 

その日から、私は「してもらって当然」「私は日本人だから」などという気持ちを出来るだけ封印し出来るだけ笑顔を絶やさず、もし腹が立ったり気分が沈んだりした日は祖母の手紙を読み返しています。
そして、3月に長女を無事に出産し今は彼女がもう少し大きくなり日本に帰国したら祖母の祭壇に笑顔でたくさん積もる話をしようと思います。