『2666』 – 世界的作家の「終活」

ロベルト・ボラーニョという作家をご存知でしょうか?

2003年に50歳の若さで亡くなった、チリの作家です。

以前、「異文化から学ぶ「終活」⑦」という記事で触れましたが、中南米の作家の作品は「ラテンアメリカ文学」とくくられることが多く、その特徴に土着的な「死への意識」の反映が挙げられます。

そんな「ラテンアメリカ文学」の鬼才と称されるロベルト・ボラーニョの遺作が『2666』という全五部からなる大著です。

2666

五冊であり一冊である

さっそくですが、表題に「世界的作家の「終活」」と記した理由をご説明します。

死期が近づいていたのを悟ったロベルト・ボラーニョは遺言を残しました。
先に述べたとおり『2666』は全五部からなる大著です。

ですが、遺言には一つの部を一冊として、一年に一冊ずつ刊行すること——つまり、全五冊とすること——、そしてその五冊の出版社との契約金が明記されていました。
ボラーニョはこのことによって、彼の子供達の経済的保障を行なったのです。

ですが、『2666』は辞書のような分厚さで、一冊の小説として刊行されました。

遺族の決定

ボラーニョの死後、遺言を知った遺族は、ボラーニョ本人が「文学的な問題に関して、助言を求めるべき友人」と指定していた人物による遺作の研究を依頼します。

その結果、作品の文学的価値を重視した場合、それは一冊の本として刊行されるべきだと判断されます。
そして出版されたのが『2666』です。
それは、決して実利的でない決定でした。

『2666』の冒頭には、「著者の遺族による注記」が記されています。

最後に、その「注記」の最後の一文を引用します。

病状が悪化して最悪の事態に至らなければ、彼はきっとそうしていたことでしょう。