続・遺影について

「終活マガジン」では、ひとびとが「死」を受け止めるにあたり、さまざまなカタチを必要としていることについて繰り返し言及してきました。

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仏式の葬儀では多くの場合、参列者は遺影を見つめています。
故人を想うための「カタチ」がそこにあるのです。

以前、「遺影について」という記事を掲載いたしました。
こちらの記事では、遺影の成り立ちやその歴史の意外な短さについて述べています。

また、遺影が写真となり、一般化する以前についても少し触れていますが、今回はそのあたりをもう少し掘り下げてみたいと思います。

供養絵額

山に囲まれ、「民話の町」として有名な岩手県遠野市。
民俗学者の柳田國男が『遠野物語』の舞台としたことから、民俗学に興味のある方には馴染み深い地名かもしれません。

その遠野市立博物館には、「供養絵額」と名付けられた板絵が多数展示されています。
この「供養絵額」、いったいどのようなものなのか。

故人の戒名が記され、故人の姿がその好んだ時の過ごし方とともに描かれた絵馬。
それが「供養絵額」です。

民間信仰が生み出した「遺影」として、たいへん興味深いものですし、なにより「故人の好んだ時の過ごし方」を描くというところが粋だと筆者は感じました。

ムカサリ絵馬

こちらは「供養絵額」に比べ特殊な絵馬で、山形県の一部地方に伝わっているものです。
民間信仰が生み出した「遺影」としては「供養絵額」と同じですが、亡くなったかたすべてに用意されるものではありません。

未婚で亡くなった故人に対し、遺族がそのことを不憫に思い、死後の世界での結婚式をイメージし描かれる絵馬が「ムカサリ絵馬」なのです。

民間信仰が生み出しただけあり、時代感やその土地の価値観などを強く反映した「遺影」であり、故人を想う、というよりは、どこか祈りに近いような気持ちが反映されているようです。

これからの遺影

上にご紹介した「供養絵額」、「ムカサリ絵馬」は、どちらも遺されたひとびとの思いが反映された遺影です。
昨今、「終活」として「遺影」を準備しておく、ということが珍しくなくなりました。

そもそも「遺影」は必要なのか否か。また、誰のためのものなのか。

そのあたりは前回の記事「遺影について」で言及しましたが、今回ご紹介した民間信仰が生み出した特殊な「遺影」のカタチを知ることで、さらにそのことについて考えることができそうです。