2018総集編 ④書籍 – 前編

異文化の死生観には、体験を通してしか理解できないものも多くあります。
……いえ、異文化に限らず、多くの死生観はそうしたものなのかもしれません。

なんらかの経験を通じ、感じたこと、疑問やひっかかり、ぼんやりとした何か——そうしたものを自身に深く定着させる、あるいはより明確に理解する。
それらの作業には言葉を用いるのがもっとも適しています。

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今回は、今年の記事で扱った書籍をあらためてご紹介いたします。

小説

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『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子

昨年最初にご紹介したのは第158回芥川賞受賞作である小説作品でした。
「玄冬(げんとう)小説」とも称されたこの作品。年嵩となるにつれひとは落ち着きを得ます。老人と呼ばれる歳となれば、静かな暮らしを送る姿を想起されやすい。
では、その内側はどうでしょうか。当然のこと、肉体同様、精神もまた老いるものでしょう。ですが、その「精神」の様相は表面化しないため、われわれは物静かな老人は胸中もまた静寂だと思い込んでいるのではないか。

東北弁が生み出すグルーヴによって、74歳の「桃子さん」の内側が静寂とは程遠い様相であることをこの小説は描き出しています。

絵本

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国民的絵本作家、加古里子

今年、92歳で亡くなる寸前まで旺盛に活動をされていた加古里子(かこさとし)さん。
その著作は多種多様、かつ膨大で、触れたことのないひとのほうが珍しいかもしれません。

加古里子さんの絵本の大きな特徴のひとつに、彼の出自が工学博士であることが挙げられます。
ゆえにその内容は絵本といえど専門書に匹敵するほど充実しており、特に『かわ』『海』『地球』『宇宙』『人間』といった科学シリーズは、「死」という最大の謎と向かい合うための深く大きな視点を獲得するのに最適と言えるでしょう。

哲学

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『誰にもわかるハイデガー』筒井康隆

今年はハイデガーの『存在と時間』にまつわる記事を多く掲載しましたが、そのきっかけとなったのが小説家筒井康隆の講演を元に書かれた本書です。
「終活マガジン」ではなんども言及しましたが、『存在と時間』は難解かつ大著であるため、ある程度の哲学の素養なしに読むことは不可能です。
ゆえに、優れた入門編である本書を「終活マガジン」ではご紹介しました。

後編に続く