明るい死の背景

過去三回に渡り、死と値段——金銭的価値——をテーマに考えてきました。

その中でも、とりわけ大きな問題として浮かび上がったのは金銭的価値に依存しない「死」の捉え方——死生観——の欠如です。
この国における死生観の稚拙は幾度も取り上げてきたテーマであり、「異文化から学ぶ」シリーズにおいて、問題の解決策を模索してきました。

今回は、過去に一度取り上げたメキシコの文化を再度扱いつつ、現状のこの国における死と値段の関係性の再構築を考えてみたいと思います。

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高い犯罪率、低い自殺率

メキシコという国を考える時、つい前景化させてしまうのが、コントラストの高い死のあり様です。
異文化から学ぶ「終活」⑦」でも取り上げましたが、他国と比較した時、メキシコの犯罪率と自殺率は特徴的でした。

今回は、もう少し生活に密着した文化を取り上げたいと思います。

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オアハカ

メキシコ南部に位置するオアハカ州の州都オアハカ。
メキシコシティやティファナに次ぐメキシコの大都市ですが、市内の治安は悪くないようです。

オアハカは特殊な都市で、メキシコ国内においてもかなり特色の強い食文化を持ち、先住民族の割合は約40%で、メキシコ全体の割合である15%を大きく上回ります。
また、歴史地区とモンテ・アルバンの考古遺跡が世界遺産に認定されている美しい街です。

そんなオアハカでは、なんとアーティストはアートによって所得税を支払えるとのこと。

アートと金銭的価値

先住民族が半数に迫る大都市でありながらも安定した治安を維持しつつ共存し、古い街並みを大切にし、食文化に強い特色を持つ。

好意的に言い換えれば、歴史を重んじ、他者を尊重し、生活を大切にしている——オアハカはそうした都市のようです。
そうした背景を持っているがゆえに、アーティストがアートによって所得税を支払うという稀有な仕組みを保持できているのかもしれません。
それでいて大きな都市であることは驚きです。

アートというのは金銭的価値が曖昧であることがほとんど。
そもそもが、値段——金銭的価値から逸脱する、あるいは依存しない目的で成立しているものですから、それは当然のことでしょう。
しかし、そうしたものが街に、日常に、庶民に、生気を奪わずに共存させるには、現代において金銭的価値を与えることは必須です。

そうした矛盾と向き合いつつ、しかしアートの価値——金銭的価値でないもの——の重要性を重んじた結果、オアハカは前述した「歴史を重んじ、他者を尊重し、生活を大切にしている大都市」であり得たのではないでしょうか。

死と生の値段からの救済

過去三回に渡り扱った死と値段——金銭的価値——ですが、メキシコの都市オアハカから学べるのは、金銭的価値が曖昧で不明確なものの大切さを共有することの重要性です。

今後のこの国を「死と生と値段」の関係から救済する術は、そうした意識の底上げにしかないのかもしれません。
だとすれば、最重要なことは「教育」でしょう。

教えることによって学ぶことは豊富です。
我々の「死と生」は値段によって決められるものではないと、あらためて信じたいと筆者は考えています。