ドラマ「チョコレートの箱」と死生観 

〜甘いものには毒がある?①

※このシリーズは物語の核心部分に触れていることがあります。作品を未読・未見の方はご注意ください。

シェイクスピアというイギリスいちの劇作家でスタートを切りました「死生観シリーズ」、同じくイギリスからふたりの著名な作家の作品を、それぞれ映像化したものをご紹介します。
まず「ミステリーの女王」と言えばこの人、アガサ・クリスティの生み出した名探偵エルキュール・ポワロシリーズから参りましょう。このシリーズは主に長編小説が国内外を問わず様々な名優・名監督によって映像化されていますが、ドラマヴァージョンと言えばデビッド・スーシェ主演のシリーズが最も有名且つ人気が高く、初めて「ポワロもの」を観る方には特にオススメのシリーズです。多少のアレンジはあるものの、シリーズの全作品を映像化していることと、ポワロをはじめとした各主要キャラクターの再現度が非常に高いことも人気のひとつで、「ポワロ=スーシェ」のイメージを持っている方は国内外のファンを問わず多いとのこと。
タイトルロールのエルキュール・ポワロはベルギー生まれの私立探偵です。フランス語訛りの英語を話す姿がことドラマではユーモアたっぷりに描かれていますが、ここには第一次世界大戦の最中、ポワロの故郷ベルギーがドイツ軍に侵攻されたためイギリスへの亡命を余儀なくされた歴史の闇の部分を背負った設定が隠れています。
今回はその中でもポワロもの初期の短編『チョコレートの箱』のスーシェ主演ドラマ版を読み解いていきます。
「チョコレートの箱」の時間軸は、ポワロがまだベルギーで警察官として働いていた頃まで遡ります。原作ではパートナーとして活躍するヘイスティングスに回顧して聞かせる話ですが、ドラマ版では彼の代わりに捜査仲間のジャップ警部が登場します。
警部がベルギーより名誉ある勲章を授与されるということで、長旅嫌いな夫人の代わりに同伴したポワロ。到着するや警察官時代の同僚で現在は警視総監にまで出世した友人シャンタリエに出会い、昔話に花を咲かせますが、彼はそこで「この完全無欠の男も間違いを犯した過去があったんだ」とポワロをからかいます。ですが、ポワロの口からは「私は間違っていなかった」という確固たる言葉が飛び出し、そしてこう続けるのです。「記録を訂正する時がきた」ーー。

darama.2-min

エルキュール・ポワロに扮するデヴィッド・スーシェ
『名探偵ポワロ』DVDパッケージ画像・Amazon商品ページより