ドラマ「チョコレートの箱」と死生観 

〜甘いものには毒がある?③

※このシリーズは物語の核心部分に触れていることがあります。作品を未読・未見の方はご注意ください。

直属の上司に再捜査を提案したもののすげなく却下されたポワロは、ヴィルジニーとともに調査を始めます。
まずはデルラール家に足を運びます。ポールの書斎を調べていると、現場に居合わせたボージュがやってきます。詳しい話を聴こうとしたその時、机の上のチョコレートの箱がポワロの目にとまります。華麗な装飾文字で「ST. ALARD(サン・タラール)」と書かれた箱で、伯爵が自社で作らせているオリジナルのチョコレートです(さすが、上流貴族は違います…)。中身は空で、晩餐の折に伯爵が手土産に持ってきたもので、食後に皆で食べた後はポールが亡くなる前に仕事をしながら食べていたものでした。洒落た作りで箱と蓋は色違いになっており、上品なマーブル模様のピンクの蓋と、グリーンの箱が目を惹きます。
ですが、ボージュは違うと言います。皆で食べた時は、ピンクの蓋にピンクの箱だったと。となれば、グリーンの蓋と箱の組み合わせのものが存在し、それぞれが何かの拍子に入れかわったと考えるべきです。つまり、誰かがチョコレートに毒を入れたときに入れかわった=ポールは毒殺されたという可能性が浮上しました。
毒について、ポワロはある友人の助言を得ることにします。薬剤師のジャン=ルイ・フェローで、くだけた会話からふたりの気のおけない関係性がわかります。ポワロは採取しておいたピンクの蓋とグリーンの箱に残っていたチョコレートの欠片をジャン=ルイに渡し、分析を頼みます。結果は的中。トリニトリンという高血圧患者に処方される薬で、ポールの死の二日前にジャン=ルイがボージュ宛てに処方したものです。ボージュはマダム・デルラールが常用している目薬と一緒に自分のものを受け取りに薬局に来ていたことも判明。苦味が強いためチョコレートに包んで服用していたことを知っていた犯人が盗んで毒殺に使ったとポワロは仮説を立てます。実はボージュ自身、盗まれた薬を取り戻そうと独自に動いていましたが、政府の諜報局員という裏の顔を持っており、且つそれが「有事の際、政府内でドイツに加担する人物」を探るためだったこともあり、薬を盗まれたことをギリギリまでポワロに告白できなかったのです。
これらの状況から、ポワロはある人物が犯人ではないかと確信を持つようになります。事件の関係者であり、被害者と口論をし、殺す動機が十分にあり、手段も持っていたサン・タラール伯爵です。出不精の彼の唯一の趣味であるオペラにヴィルジニーが誘い出すことでポワロが屋敷に潜入・調査し、見事伯爵の上着のポケットから処方箋付きのトリニトリンの小瓶を見つけ出します(もちろん不法侵入です…)。劇場で、伯爵はご機嫌でヴィルジニーにチョコレートを差し出しますが、この時の蓋と箱は両方グリーンでした。
ですがまだ状況証拠だけで、これでは伯爵を逮捕できません。そこでヴィルジニーは、自分に懸想している伯爵の気持ちを逆手にとり、自白を引き出すと名乗り出ます。本来ならここで止まるべきでしたが、証拠があまりにも揃っていたため有頂天になったのか、ポワロが影で自白を聞き取ることで逮捕にこぎつけようという算段となりました。今度はデルラール家に侵入します。
ヴィルジニーの会話術もなかなか見事で、直接的な発言は避け、のらりくらりとしながら確実に伯爵の自白を聞き出そうと誘導します。伯爵は告げます、「彼の死は私に責任が。(中略)心臓を撃ったも同じだ」と。ポワロはしっかりと聞き届け、あとは逮捕するだけでした。マダム・デルラールが帰宅し、ポワロの姿を見つけるまではーー。

drama.8-min

左:ルーシー・コフー(ヴィルジニー)、右:デビッド・スーシェ(ポワロ)
該当話収録DVDパッケージ、Amazon商品ページより