死神の姿と死生観

〜死は気まぐれにやってくる②

matome16-3

ジャン=フランソワ・ミレー「死と木こり」
1858〜59年、ニイ・カールスバーグ美術館(デンマーク)

まるでお伽話を思わせるような、不思議な雰囲気の作品です。そう思わせるのは、作品全体を覆うトーンのせいなのか、不自然なほどに白いマントを纏った人物の左の肩に、大振りの鎌がもたれているからかーー。
やけにリアルに傾いた大鎌と、左手が握る砂時計というアトリビュートが描かれていることにより、この人物が死神であることがわかります。右手は近くに腰掛けていた男の肩を掴み、「モタモタしていないで行くぞ」と引っ張って行かんばかり。時刻は夕方、一仕事終えて気まぐれに腰を下ろしただけの男を、死神は無慈悲にも引っ張って行こうとしています。
そう、事故でもない、病気でもない、勤勉にこの年齢まで労働に従事している真面目な男なのにも関わらず、なんの前触れもなく、「ああ、そう言えば」とでもいうように死者の世界に連れて行かれる。ただ偶然、死神の目に止まっただけで。
時刻が夕方であるのも理由があります。夕方の別の呼び名は黄昏時、「“た(誰)”“かれ”(彼)ぞ」という呼びかけの言葉を語源としており、目の前に誰がいるのか一瞥では判別できない暗さであることからつけられた呼び名です。おそらく、木こりも最初は死神の顔がよくわからなかったのではないでしょうか? それが、かすかな残光により正体が明らかになってしまった。死神と気づかなければ、木こりはこんなにも恐怖に染まった顔にはなりません。死神にしてみれば、抵抗されて「面倒臭い」とでも思っているのでしょうがーー。
死は、突然目の前にやってきます。それまでいかに善行を積んだ人間であろうと、悪事を働いてきた人間であろうと、平等に。
この作品はサロンに出品されましたが、当時は良く評価されませんでした。ですが他の画家たちは非常に感銘を受けたといい、その中にはゴッホもいたと言われています。